出張中の災害
事業主の指示・命令で出張中のときは、事業主の管理下にはありませんが、その間は出張による業務を遂行する義務を負っていますので、通常は事業主の支配下にあると考えられ、業務遂行性が認められます。
ただし、出張中の場合であっても、労働者が積極的に私的行為を行った場合や恣意的行為を行った場合などには業務遂行性が否定されることになります。
以上のことから、出張中の災害については、特別の事情がない限り、業務起因性が認められます。すなわち、①伝染病流行地に出張して伝染病に罹患した場合(昭和23年8月14日 基収1913)や、②出張先の食事が原因で罹患した場合(昭和29年8月18日 基収2691)のほか、③出張先で旅館に宿泊中、火災に遭ってけがをした場合なども原則として業務災害になります。
また、大分労働基準監督署長(大分放送)事件(福岡高等裁判所平成5年4月28日判決)においては、出張先の宿泊所で夕食中に飲酒した後、階段から転落して死亡した事案について、その労働者は出張の全過程において事業主の支配下にあり、宿泊所内での慰労と懇親のための飲酒は宿泊に通常随伴する行為であり、業務と全く関連のない私的行為や恣意的行為ないしは業務遂行から逸脱した行為によって自ら招いた事故である等の業務起因性を否定すべき事実関係はないとして、業務起因性を肯定しました。
他方、立川労働基準監督署長(東芝エンジニアリング)事件(東京地方裁判所 平成11年8月9日判決)は、労働者が出張先の同僚の送別会に出席して飲酒後、溺死した事件について、送別会は任意参加であったとして業務遂行性を否定し、同災害は業務と無関係の私的行為によるものであるとして業務起因性を否定しました。
出張先へ移動中の災害
事業主の指示・命令で出張するときは、出張先に出向いてから帰着するまでが業務であり、事業主の管理下にはありませんが、業務を遂行する義務を負っていますので、通常は事業主の支配下にあると考えられ、業務遂行性が認められます。
例えば、①所属課長の命により無届け欠勤者の事情を調査するため、自宅から自転車で欠勤者宅に移動する途中で電車にはねられて死亡した場合(昭和24年12月15日 基収3001)、②林業労務者を募集するために出張し、用務を果たして、トラックに乗って帰る途中、トラックが転落事故を起こして負傷した場合(昭和27年1月29日基災収33)は、いずれも業務災害と認定されました。
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