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パワープレス機の操作中に両手の親指と人さし指をいずれも切断するという労災事故で、労働者の過失65%が認定された裁判例
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R T
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2024-06-11
労務問題で平栗弁護士にお世話になりました 私にとっては予想を上回る有益な結果となりました 精神的にも経済的にも私に寄り添って下さり感謝しております また非常に短時間で解決してくださったことも 私にとっては負担軽減となりました 適宜適切な指示をくださり 判断や決断が出来ない時には複数の選択肢とともにアドバイスしていただきました 一番心配だった費用に関しても常に明快に答えてもらえました 担当が平栗弁護士で本当に良かったです
岡村洋孝
岡村洋孝
2024-06-04
50年操業した法人の廃棄とそれに伴う一連の個人清算について初めての事で大変不安でした。自分の事より従業員、家族、家、生活はどうなってしまうのか‥そんな当初から親身になって懇切丁寧なご指導と励ましを常に賜りながら着実に、お陰様でゴールに辿り着く事が出来ました。 申先生の並々ならぬご尽力と家族の理解、協力も有り、拠り所である家を残す事も出来ました。グリーンリーフさんに相談して本当に良かった。 申先生、時田先生、岡庭様には言い尽くせない感謝の気持ちでいっぱいです。 ここまで頑張れたのも皆様のお力を注いで頂いたお陰、人生最大の危機をお救い頂いたこのご恩は、再出発出来た今後の第二の人生に生かして、世の為人の為に費やそうと思い出ます。 貴社並びに皆様方の今後益々のご活躍とご発展、ご健勝を心よりお祈り申し上げます。 ありがとうございました。
白川
白川
2024-05-28
交通事故被害の相談を申先生にしました。先生は交通事故にとても詳しく、最後まで親身に対応してくださり、結果的にとても満足した形で解決出来ました。申先生は他にも数多くのトラブルを解決されてきたそうです。事務所のスタッフの方もご丁寧に対応してくださり、応接室は広く綺麗でプライバシーが厳重に守られていると思います。 困った時は必ず再度相談します。
小野不二男
小野不二男
2024-04-01
特別な制度の利用依頼に親身になって複数の相手方に長期に交渉をして下さり調停で解決頂きました。伸先生とアシスタントの岡庭さんには感謝しかありません。 ありがとうございました。
R R
R R
2024-03-17
吉田先生は対応が早くて丁寧、かつ、気さくで相談しやすいです。 電話対応などしてくれる事務の方も丁寧です。
funny 58
funny 58
2024-03-15
こちらの法律事務所の遠藤先生に以前お世話になりました。若くして技量がありとても頼りになる優秀な先生でした。
青木奈美
青木奈美
2024-02-20
とても丁寧な対応をしていただきました。 追突事故での対応をお願いしましたが、全て安心してお任せできました。 後遺障害や示談交渉などの流れも細かく連絡していただき 納得のいく解決となりお任せしてほんとによかったと思いました。
47 yuki
47 yuki
2024-02-19
遠藤先生に相談させて頂きましたが、最善の方法を模索して頂き感謝しています。若い先生ですが損得では無く顧客の為を真剣に考えて下さる素晴らしい方でした。 話し方も柔らかく相談しやすかったです。 今後もお世話になると思いますがこの度は本当にありがとうございました。
山田敦
山田敦
2024-01-31
いつも親身な対応で助かっております。

基礎知識

事務所について

事務所概要・アクセス

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所 〒330-0854
埼玉県さいたま市大宮区桜木町一丁目11番地20 大宮JPビルディング14階
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労働者の過失が65%と認定された、「パワープレス機の操作中に,両手の親指と人さし指をいずれも切断するという労働災害事故」の裁判例をご紹介します。 【事件番号】 東京地方裁判所判決/平成20年(ワ)第26104号 【判決日付】 平成22年5月25日        主   文  1 被告は,原告に対し,565万0457円及びこれに対する平成20年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。  2 原告のそのほかの請求をいずれも棄却する。  3 訴訟費用は,100分の15を被告の負担として,そのほかを原告の負担とする。  4 この判決の第1項は,仮に執行することができる。        事実及び理由 第1 原告の請求  1 被告は,原告に対し,3492万6393円及びこれに対する平成15年7月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。  2 原告が被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 第2 当事者の主張等  1 事案の概要    被告のプレス工場で勤務していた原告は,平成15年6月30日,パワープレス機の操作中に,両手の親指と人さし指をいずれも切断するという労働災害事故に遭遇した(以下「本件事故」という)。    原告が本件事故の後,就労しなかったことから,被告は,平成19年10月5日付けで原告を解雇した(以下「本件解雇」という)。    本件は,原告が,本件事故について,被告にプレス機に対する安全管理を怠った過失があるなどと主張して,被告に対し,雇用契約上の安全配慮義務違反に基づき,損害賠償3492万6393円及びこれに対する本件事故の翌日である平成15年7月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いを求め,また,本件解雇は相当性を欠くなどと主張して,被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めている事案である。  2 前提となる事実(証拠等の記載のあるもの以外は争いがない)   (1) 当事者等    ア 被告は,各種板金加工等を目的とする株式会社であり,埼玉県羽生市(乙3)の羽生工場に小松製作所製のパワープレス機を設置して(平成15年6月ころ,従業員12人,プレス機17台),カーナビやカーオーディオの部品等を製作している(乙1,2,被告代表者,弁論の全趣旨)。    イ 原告(昭和29年10月生)は,中国で出生した中国人であるが,平成2年10月,来日して被告に入社し,羽生工場で部品の分別,プレス加工等の業務に従事していた(甲18)。   (2) 本件事故等    ア パワープレス機は,加圧式スライドが数十トンにも及ぶ強い力で下方に下がり,素材を折り曲げるなどして部品等を製作する機械であるから,本件のように,指の切断等重大な事故の発生の危険が予見される。そこで,そのような結果を回避するために,作業者の手が危険限界内にあるときにはスライドが下死点まで下がらないようにするなどの対策がとられるべきである(甲11~13,15)。     本件事故時に原告が作業をしていたパワープレス機(加圧能力60トン,以下「本件プレス機」という)の操作方法には,次の2種類がある(乙1,2,A証人)。    ① 両手操作式      本件プレス機の前面下部に設置された両手操作押ボタン盤の左右のボタンを両手で同時に押すことで,スライドが下がる方法である。すなわち,2個のボタンを両手で同時に押さなければ,スライドが下がらないので,作業者の手が危険限界内にあるときは,必然的にスライドが下がらない。      この方法は,②の足踏み式に比べて,一般的に事故防止効果が高いが,作業の速度や能率は劣るといわれている。    ② 足踏み式      足下に設置されたフットペダルを片足で踏むことで,スライドが下がる方法である。この方法は,①の両手操作式に比べて,作業の速度や能率がすぐれているが,作業者の手が危険限界内にあってもスライドが下がりうる(事故防止効果が低い)ので,これを避けるために,光線式安全装置(危険限界内に手を差し入れるとセンサーが感知して,スライドの作動が止まる)が併用されることがある。ただし,被告は,本件事故当時,この装置を作動させていなかった。      両手操作式と足踏み式とは,本件プレス機の前面上部右側に設置された操作盤のスイッチで,容易に切り替えることができる。ただし,スイッチがロックされていれば,切り替えはできなくなる。    イ 原告は,平成15年6月30日午後6時15分ころ(乙3),本件プレス機を足踏み式で操作中,スライドが下がっているときに,危険限界内に手を差し入れてしまい,両手の親指と人さし指をいずれも切断して欠損するという労働災害事故(本件事故)に遭った。   ウ 原告は,平成15年6月30日から同年12月22日まで176日間にわたり,新井整形外科に入院して治療を受けたが,両手の親指と人さし指,右手の中指の先端をいずれも欠損した状態で症状固定となり(障害の程度は,身体障害者福祉法別表の3級相当),平成16年1月6日,「切断による両母指・示指欠損」という障害名により,身体障害者手帳の交付を受けた(甲2~4)。  (3) 本件解雇   ア 原告は,本件事故の後,被告との間で,復職可能性等について何度か交渉等の機会を持ったが,結局,就労することがなかった。   イ 被告の就業規則50条に,「会社は,次の各号に掲げる場合に従業員を解雇することがある。1 従業員が身体または精神の障害により,業務に耐えられないと認められる場合」という定めがある。     被告は,平成19年9月5日,原告に対し,就業規則50条1号に基づき解雇予告通知を発して,これにより,同年10月5日,退職したものと扱った(甲9,10,乙7)。  3 本件の争点  (1) 本件事故に対する被告の責任  (2) 本件事故による原告の損害(過失相殺)  (3) 本件解雇の相当性  4 当事者の主張  (1) 本件事故に対する被告の責任(争点(1))について   【原告の主張】   ア 被告は,原告との雇用契約に基づき,プレス機の操作中の労災事故を回避するために,必要な安全管理を尽くすべき安全配慮義務を負っていた。   イ ところが,被告(B前社長)は,平成15年6月30日午後5時ころ,勤務時間が終わったから帰ってもよいかと尋ねた原告に対し,必要もないのに本件プレス機等での作業を命じて,次のとおり,安全配慮義務に違反した。     その結果,同日午後6時15分ころ,本件事故が発生して,原告は,両手の親指と人さし指を,いずれも切断して欠損するという重大な後遺障害を負った。   ① 被告は,光線式安全装置を作動させないまま,足踏み式で原告に作業を開始させて,安全管理を怠った。   ② 仮に,両手操作式で原告に作業を開始させたとしても,原告がこれを足踏み式に容易に切り替えることができたのであるから,被告は,切り替えスイッチをロックするか,光線式安全装置を作動させるか,いずれかの対策をとるべきであったのにそのようにせず,足踏み式に切り替えることができる状態で作業を開始させて,安全管理を怠った。   ③ 仮に,両手操作式を足踏み式に切り替えたのが原告であることから,②の場合に被告の責任を問うことできないとしても,本件プレス機は,次の法規等に違反しており(作業者の手が危険限界内に入らないような構造,すなわち,本件事故のような手がプレス機に巻き込まれる事故が起きないような構造になっていない。とくに,確実な安全装置である光線式安全装置を作動させないようにできる),しかもスライドが下死点から上がらない不具合のあるものであった。     被告は,このような問題のあるプレス機を設置し,漫然と原告に作業を開始させて,安全管理を怠った。    a 労働安全衛生法42条,別表2    b 労働安全衛生規則131条1項ないし3項,132条,134条,134条の2    c 動力プレス機械構造規格41条1項「動力プレスで,スライドによる危険を防止するための機構を有するものは,次の各号のいずれかに該当する機能を有するものでなければならない。(一部略)2 スライドを作動させるための押しボタン又は操作レバーから離れた手が危険限界に達するまでの間にスライドの作動を停止することができること」   【被告の主張】   ア 被告が,一般論として,必要な安全管理を尽くすべき安全配慮義務を負っていたことは争わない。   イ 本件事故の発生は認めるが,そのほかは否認する。被告は,次のとおり安全管理を尽くしたから,安全配慮義務違反が認められない。   ① 被告は,足踏み式ではなく,事故防止効果の高い両手操作式で,原告に作業を開始させたのであるから,安全管理を尽くしたことが明らかである。   ② 被告は,両手操作式で原告に作業を開始させたのに,原告が,楽をしようとして勝手に足踏み式に切り替えて作業をしたために,本件事故が発生した。すなわち,本件事故は,原告がみずから招いたものであり,そこに被告の安全管理責任を問うことはできない。   ③ 本件プレス機は,光線式安全装置等が設置されており,いわゆる「安全プレス」ということができる。また,本件事故後の調査によっても,本件プレス機に不具合はなかった。  (2) 本件事故による原告の損害(争点(2))について   【原告の主張】   ア 逸失利益等 4133万1899円   ① 逸失利益 2489万1899円     7143(円,障害補償年金給付日額)×365(日)×0.79(後遺障害等級併合5級相当)×12.0853(67歳までの就労可能年数19年のライプニッツ係数)=2489万1899円   ② 入通院慰謝料 244万円(6か月)   ③ 後遺障害慰謝料 1400万円(後遺障害等級併合5級)   イ 労働災害保険給付の控除 640万5506円   ① 休業補償給付 65万9792円   ② 障害補償年金 574万5714円    a 平成16年7月~9月 15万9907円    b 平成16年10月~平成17年7月 90万9065円    c 平成17年8月~平成18年7月 100万8410円    d 平成18年8月~平成19年7月 98万9472円    e 平成19年8月~平成20年7月 99万9705円    f 平成20年8月~平成21年7月 100万7493円    g 平成21年8月~平成22年3月 67万1662円   ウ 原告の損害 3492万6393円(アからイをマイナス)   【被告の主張】   ア 損害の主張は争う。とくに,原告は,症状固定時(退院時)に49歳であったから,仮に逸失利益が発生するとしても,原告の労働能力喪失期間は18年である。   イ 原告は,本件事故の前年,救急搬送されて入院したことがあるが,このことと本件事故は関係がない。     被告においては,本件事故の前,何回か労災事故が発生したことがある。しかし,これらは,危険を内包するプレス機を扱う以上避けることができなかった事態である。原告が指示に反して,勝手に足踏み式で作業をしたために発生した本件事故は,過去の事故歴とは異質であり,そこに被告の落ち度を認めるべきではない。   ウ 被告は,プレス機の危険性を重視して,安全教育に力を入れており,全社員にその操作方法や取扱いの留意点を説明することはもちろん,女性である原告に対しては,怪我を避けるために,絶対に足踏み式で作業をすることのないよう厳しく注意をしていた。     ところが,原告は,作業の負担を減らすために,被告の注意等を無視して,勝手に足踏み式に切り替えて作業をした。B前社長は,本件事故当日,原告が足踏み式で作業をしているのを見とがめて,何度も両手操作式に戻させたが,原告は前社長が目を離すとすぐに,足踏み式に切り替えていた。     このような事情によれば,仮に被告に一定の安全配慮義務違反が認められるとしても,損害の公平な分担の見地から,原告には,少なくとも8割5分の過失相殺が認められるべきである。   【原告の反論】   ア 原告は,平成14年9月,残業や休日出勤による過労を原因とする胸部痛のために,救急搬送されたことがあったが,被告は,その後も原告の体調に配慮をせず,続けてプレス加工のような危険な仕事に従事させた。   イ そのほかにも,被告においては,プレス機で,派遣社員が平成2年,左手の指を全部切断したり,社員が平成3年ころと平成12年ころの2回,事故に遭って解雇されたり,社員が平成14年骨折して休職したり,社員が平成15年初めころ指を挟んでその骨が変形したりするなど,労災事故が頻発していた。   ウ それにもかかわらず,被告は,社員に対し,十分な安全教育を行わず,漫然と足踏み式で作業することを黙認していた。     B前社長は,平成15年6月30日午後5時ころ,羽生工場において,息子のC(現代表者)に社長職を譲ることを告知したが,そのとき,勤務時間が終わったから帰ってもよいかと尋ねた原告に対し,必要もないのに本件プレス機等での作業を命じた。このとき,前社長は,工場内を巡回していたから,原告が足踏み式で作業をさせられていることが分かったはずであるが,何の注意等もしなかった。     すなわち,被告は,10年以上の経験を持つ熟練工である原告を,能力が高いとか作業が早いなどとほめて男性並みの作業をさせたが,いったん事故に遭うと,てのひらを返したように,その責任を原告だけに負わせようとしている。このような被告の態度を考慮すると,本件で過失相殺を認めるのは不当である。  (3) 本件解雇の相当性(争点(3))について   【原告の主張】   ア 被告は,入院していた原告に対し,事務職に充てると約束したが,その後これを履行しなかった。   イ 被告は,団体傷害保険に加入しており,保険料を原告の給与から天引きしていたが,本件事故は,被告が命じた作業中ではあったが勤務時間外に発生したことから,この保険で担保されず保険金が支払われなかった。   ウ 原告は,本件事故後も,復職に向けての交渉等のために被告から呼び出されたときは,必ずこれに応じて出社していた。ところが,被告は,平成19年8月,被告でできる仕事はないという理由で一方的に退職勧奨をして,健康保険を国民健康保険に替えるよう指示した。     したがって,本件解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないことが明らかである。   【被告の主張】   ア 被告は,原告の退院後,掃除等の軽作業であればいつでも復職できると伝えていた。また,労災保険等の手続のために来社した機会に,復職のめどを尋ねたが,いつまで経っても原告がこれを明らかにしなかったために,交渉が進展しなかった。     なお,原告が中国人であり,日本語が流ちょうではないので,被告は,原告に事務職を勧めたことはない。   イ 被告は,平成16年7月ころ,原告が当面復職できないというので,やむを得ず,被告が保険料を負担していた原告の団体傷害保険を解約した。その後,平成18年12月と平成19年8月の2回,就労意思を確認するために書簡を送って来社を求めたが,原告はこれに応じなかった。   ウ そこで,被告は,原告に就労意思がないものと判断して,平成19年9月5日,やむを得ず本件解雇の意思表示をした。被告は,それまで,原告の復職可能性を考慮して,健康保険料,介護保険料,厚生年金保険料等を負担していた。     したがって,本件解雇は,客観的に合理的な理由を欠くことはなく,社会通念上相当なものである。 第3 本件の争点についての判断  1 本件事故に対する被告の責任(争点(1)),本件事故による原告の損害(過失相殺)(争点(2))について  (1) 前提となる事実,証拠(各所に記載したもの)と弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。   ア 本件プレス機の操作方法のうち足踏み式は,両手操作式に比べて,作業の速度や能率が優れているが,事故防止効果は低いので,製造部長のAは,ベテラン社員に対しても,足踏み式で作業をするよう指示することはなかった。とくに,女性社員に対しては,足踏み式を避けるよう厳しく注意をしていた。     ただし,この注意は,徹底されていなかった(と推測される。A証人3ページ)。社員の中には,手が疲れやすい両手操作式よりも作業の速度や能率が優れている足踏み式で作業をしたいと考えて,これを実行する者もいた。原告も,本件事故よりも前に,足踏み式で作業をしたことがあったが,この方式は「スピードがあって能率がよい」とか,「(体の疲れ具合は)少し楽」などと感じていた。     また,被告は,プレス機がしょっちゅう止まってしまうことを嫌って,光線式安全装置を作動させていなかった。しかも,切り替えスイッチがロックされておらず,ロック用の鍵が差し込まれたままの状態であったことから,原告は,両手操作式を足踏み式に,容易に切り替えることができた。原告は,本件事故当時,本件プレス機に光線式安全装置が付いていることを知らなかった。   【甲18,乙2,4,原告本人,A証人】   イ B前社長は,平成15年6月30日午後5時ころ,羽生工場を訪れて,社員に対し,社長職をC(現被告代表者)に引き継ぐと告知したが,そのとき,もう勤務時間が終わったから帰ってもよいかと質問した原告に対し,さらに作業をするよう指示した。     原告は,別の機械(タップ機)での作業を終えてから,本件プレス機での作業を開始した。そのとき,被告は,足踏み式ではなく両手操作式で作業を開始させたが,原告は,作業中に足踏み式に切り替えて作業を続け(後記(2)参照),午後6時15分ころ,本件事故に遭遇した。     被告代表者は,労働基準監督署に提出した労働者死傷病報告の「災害発生状況及び原因」に,「被災者が両手スイッチから足踏みスイッチに切替えて作業を開始し(た)」という記載をした。     A部長が,本件事故の翌日,本件プレス機の点検をしたところ,同プレス機は,正常に作動した。   【甲3,4,乙1~3,原告本人,A・B各証人,被告代表者】  (2) 事実認定の補足説明   ア 原告は,「被告は,いつも安全よりも仕事の能率を優先しており,本件事故の日に原告に対して作業の指示をしたときも,足踏み式で作業を開始させた」と主張して,原告の陳述書(甲18)の記述や原告本人の供述には,これと同趣旨の部分がある。     しかし,足踏み式は両手操作式に比べて事故防止効果が低いので,A部長は,ベテラン社員に対しても,足踏み式で作業をするよう指示することはなく,とくに,女性社員に対しては,足踏み式を避けるよう厳しく注意をしていた。また,被告は,プレス機がしょっちゅう止まってしまうことを嫌って,光線式安全装置を作動させていなかったが,そうだとすると,事故防止効果が低いので,なおさら足踏み式では作業をさせないようにしていたと考えられる。一方,両手操作式を足踏み式に切り替えることは容易であり,原告は,その方法を知っていた(それまでにもスイッチを切り替えて,足踏み式で作業をした経験があると考えられる)し,足踏み式の方が体力的に楽だと感じていた。また,原告は,本件事故当時,勤務時間が終了しており,早く帰りたがっていたとも考えられる。   イ このような事実によれば,認定事実のとおり,被告は,足踏み式ではなく両手操作式で作業を開始させたが,原告は,作業中にこれを足踏み式に切り替えて作業を続けたと認めるのが相当である。この点に反する上記記述等は,これらをそのまま採用することができない。     なお,原告が足踏み式で作業しているのを見て,厳重に注意を繰り返して両手操作式に戻させたが,原告はこれに従わず,足踏み式に切り替え続けたというBの陳述書(乙5)の記述や証言は,不自然であり採用できない。  (3) 原告の損害   ア 逸失利益   ① 年収     障害補償年金等給付日額7143円×365日=260万7195円   ② 労働能力喪失率     原告の後遺障害(平成15年6月30日事故)は,両手とも,それぞれ「1手のおや指を含み2の手指を失ったもの」(後遺障害別等級表別表第2,第8級の3)に該当するから,2級繰り上がって,併合6級に相当する。したがって,労働能力喪失率は,0.67である。   ③ 就労可能年数     原告(昭和29年10月生)は,症状固定時(平成15年12月)に49歳であったから,67歳までの就労可能年数は18年である。労働能力喪失期間18年のライプニッツ係数は11.6896である。   ④ 逸失利益の計算     260万7195円×0.67×11.6896=2041万9634円   イ 入通院慰謝料 244万円(入院6か月)   ウ 後遺障害慰謝料 1180万円(後遺障害等級併合6級)   エ 原告の損害のまとめ     イ,ウの合計 1424万円     ア~ウの合計 3465万9634円  (4) 過失相殺   ア 原告は,足踏み式での作業を避けるよう厳しく注意を受けていたにもかかわらず,作業開始後,体力的に楽であるなどの理由で,両手操作式をみずから足踏み式に切り替えて作業を続け,本件事故に遭遇した。このような経過によれば,本件事故について,原告には相当の過失があるというべきである。   イ しかし,足踏み式での作業を禁止するという注意は,徹底されていなかったと推測される。また,被告は,プレス機がしょっちゅう止まってしまうことを嫌って,光線式安全装置を作動させていなかったが,これを作動させていたら,本件事故を回避できたことが明らかである。しかも,切り替えスイッチがロックされておらず,ロック用の鍵が差し込まれたままの状態であったことから,原告は,両手操作式を足踏み式に容易に切り替えることができたのであるが,被告は,これを放置していた。     つまり,被告は,足踏み式の危険性を認識していながら,社員の安全よりも作業の効率性を優先して,確実な安全装置を作動させず,危険な状態を放置していたということができるのであり,その責任は軽視されるべきではない。     一方,原告は,光線式安全装置の存在を知らなかったし,その機能を自分で解除したわけでもないから,原告が本件事故をみずから招いたものと認めることはできない(本件は,自分から危険区域に立ち入った事案や,命綱を付けずに屋根の上で作業をした事案等とは,一線を画すものというべきである)。したがって,被告の主張のように,原告に8割5分以上の過失を認めるのは不均衡といわざるを得ない。     原告が本件事故の前年に救急搬送されて入院したことや(甲1),被告においてこれまでに複数の労災事故があったこと(弁論の全趣旨)が認められる。そうすると,プレス機のように危険な機械を扱う工場において,被告の安全管理が万全のものであったとはいい難い。   ウ このような事情を総合すれば,本件事故の過失割合は,被告が3割5分,原告が6割5分と認めるのが相当である。     したがって,本件事故による原告の損害について被告が負担すべき損害額は,逸失利益が714万6871円であり,慰謝料が498万4000円である。  (5) 労働災害保険給付の控除   ア 休業補償給付 65万9792円(調査嘱託の結果)   イ 障害補償年金 582万0622円    a 平成16年7月~9月 23万9861円(甲6)        95万9447円÷12×3=23万9861円    b 平成16年10月~平成17年7月 90万9065円(甲8)        109万0878円÷12×10=90万0965円    c 平成17年8月~平成18年7月 100万8410円(甲22)    d 平成18年8月~平成19年7月 98万9472円(甲23)    e 平成19年8月~平成20年7月 99万9705円(甲24)    f 平成20年8月~平成21年7月 100万7493円(甲25)    g 平成21年8月~平成22年3月(口頭弁論終結時) 67万4716円(甲26)       101万2075円÷12×8=67万4716円   ウ 上記ア,イの合計 648万0414円   エ 労働災害保険給付の控除の結果 66万6457円((4)のウの逸失利益から上記ウをマイナス)     なお,労働災害保険給付は,労働災害補償の代行または被災労働者の損害の填補の性格を有するものと考えられるから,その控除は,逸失利益の過失相殺後に行われるのが相当と解される。  (6) 原告の損害賠償請求のまとめ    以上のとおりであるから,原告は,被告に対し,雇用契約上の安全配慮義務違反に基づき,損害賠償565万0457円((5)のエと(4)のウの慰謝料を合計)及びこれに対する遅延損害金の支払いを求める部分について理由がある。    雇用契約上の安全配慮義務違反に基づく損害賠償債務は,期限の定めのない債務であり,債権者の請求を受けた時に遅滞に陥るものであるから,その遅延損害金の起算日は,訴状送達の日の翌日である平成20年9月25日(裁判所に顕著な事実)と認める。また,その利率について,原告は商事法定利率年6分を主張するが,上記損害賠償債務は,商行為である雇用契約上の債務とは別個のものであるから,商法514条の適用はなく,民法所定の年5分というべきである。  2 本件解雇の相当性(争点(3))について  (1) 前提となる事実,証拠(各所に記載したもの)と弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。   ア 被告は,原告の退院後,商品の梱包等の軽作業を念頭に置いて,「何か会社でできる仕事をしてください」などと勧めたことがあったが,原告は,明確な復職の態度を示さなかった。また,被告は,原告がいつ復職しても対応できるように,健康保険料,介護保険料,厚生年金保険料等の支払いをしており,タイムカードを作成していた。一方,原告は,現実的に会社のためにやれる仕事はほとんどないと考えている。     原告は,平成16年6月ころ,傷害保険料を天引きされていたが,その解約に同意した。    【乙6,原告本人,B証人,被告代表者】   イ 被告は,平成18年12月20日,原告に出社を求め,健康保険証の返還や国民健康保険への変更手続の指示をした。さらに,被告は,平成19年8月ころ,もはや原告を退職させるしかないと判断して,原告に対し,退職勧奨をした。     しかし,原告がこれに応じなかったために,被告は,平成19年10月5日付けで原告を解雇した。なお,原告は,本件事故の後,被告から,給与や退職金の支給を受けたことがない。    【甲9,10,14,18,原告本人,B証人】  (2) 認定事実に基づく判断    上記の事実によれば,もはや原告と被告の雇用契約関係の将来像を展望することはできないというほかなく,これを維持しておくべき利益は乏しいと考えられる。また,被告は,本件事故後,原告の復職を積極的に受け入れようとはしなかったが,それでも4年以上にわたり,健康保険料等を負担するなど,相応の配慮をしていたということができる。    したがって,本件解雇は,客観的に合理的な理由を欠くことはなく,社会通念上相当なものと認められる。 第4 本件の結論    以上のとおりであるから,原告の請求は,前記第3,1(6)の部分について理由があり,そのほかの部分はいずれも理由がない。したがって,主文のとおり判決する。    東京地方裁判所民事第11部            裁判官    松田典浩 シン MEMO: