このページでは、公務災害について説明します。公務員には、労災保険法の適用がなく、国家公務員・地方公務員災害補償法により補償を受けられる可能性があります。
このページは、グリーンリーフ法律事務所の弁護士が「公務災害」の仕組みについて、完結に分かりやすく説明します。
公務災害とは?
公務災害とは、地方公務員・国家公務員が公務に従事し又は通勤中に生じた災害・事故をいいます。
民間人のいう労働災害と同様に、とある災害や事故が公務災害といえるためには、公務遂行性や公務起因性が求められます。
しかし、労働災害との決定的な違いは、労働災害は労災保険法の適用を受けるのに対し、公務災害は、地方公務員が地方公務員災害補償法、国家公務員がこんな公務員災害補償法というそれぞれの法的根拠が異なるという点です。
地方公務員の公務災害請求はどのように行いますか?
法的根拠
地方公務員の公務災害については、地方公務員災害補償法に基づいて行います。
請求先
地方公務員災害補償基金という機関があり、地方公務員災害補償基金の支部長(実際には、都道府県知事がそれに当たります)宛に、「公務災害認定請求書」という書面を提出することになります。
認定基準
認定基準に関しては、通達などが多数出されており、これらを分析する必要があります。地方公務員災害補償基金のHPに紹介されております。
https://www.chikousai.go.jp/reiki/tuutatu-nintei/tuutatu-nintei.php
補償内容
基本的には労災と同様に、以下の補償が用意されております。
・療養補償
・休業補償
・傷病補償年金
・後遺障害年金又は一時金
・介護保障
・(死亡)遺族補償年金又は一時金
・(死亡)葬祭補償
危険が隣り合わせの警察官や消防士の場合は?
警察官や消防士は、治安維持や火災鎮圧など、その業務の性質上、公務員の身心に危険がつきまといます。そのため、地方公務員災害補償法46条は、これらの公務を特殊公務と位置づけ、傷病補償年金、障害補償、遺族補償の補償額を40~50%の範囲で加算することになっています。
時効はあるの?
公務災害については、公務災害補償を受ける権利が「2年」の消滅時効(ただし、傷病補償年金・障害補償・遺族補償は「5年」)が適用されます。
国家公務員の公務災害請求はどのように行いますか?
法的根拠
国家公務員の公務災害については、国家公務員災害補償法に基づいて行います。
請求先
人事院が指定する下記の補償実施機関の「補償事務主任者」宛に、各請求書を提出することになります。
なお、請求書は細かく流れており、人事院のホームページに詳細に掲載されております。
https://www.jinji.go.jp/saigaihoshou/yoshiki.html
人事院が指定する補償実施機関
〇 府省等
1 内閣府(内閣官房、内閣法制局その他の法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(8及び9を除く。)を含み、2~7を除く。)
2 宮内庁
3 公正取引委員会
4 警察庁(都道府県警察を含む。)
5 金融庁
6 消費者庁
7 こども家庭庁
8 デジタル庁
9 復興庁
10 総務省
11 法務省
12 外務省
13 財務省(14 を除く。)
14 国税庁
15 文部科学省(16 を除く。)
16 文化庁
17 厚生労働省
18 農林水産省(19 及び 20 を除く。)
19 林野庁
20 水産庁
21 経済産業省(22 を除く。)
22 特許庁
23 国土交通省(24 及び 25 を除く。)
24 気象庁
25 海上保安庁
26 環境省
27 防衛省
28 人事院
29 会計検査院
〇 行政執行法人等
1 独立行政法人国立公文書館
2 独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構
3 独立行政法人統計センター
4 独立行政法人造幣局
5 独立行政法人国立印刷局
6 独立行政法人農林水産消費安全技術センター
7 独立行政法人製品評価技術基盤機構
8 日本郵政株式会社
認定基準
認定基準に関しては、人事院の通達「災害補償制度の運用について」などにより行われます。人事院のHPに紹介されております。
https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/16_saigaihoshou/1601000_S48shokukou905.html
補償内容
基本的には労災と同様に、以下の補償が用意されております。
・療養補償
・休業補償
・傷病補償年金
・後遺障害年金又は一時金
・介護保障
・(死亡)遺族補償年金又は一時金
・(死亡)葬祭補償
危険が隣り合わせの警察職員や海上保安官の場合は?
警察職員や海上保安官は、治安維持や海上の治安維持など、その業務の性質上、公務員の身心に危険がつきまといます。そのため、国家公務員災害補償法20条の2は、これらの公務を特殊公務職員と位置づけ、傷病補償年金、障害補償、遺族補償の補償額を40~50%の範囲で加算することになっています。
時効はあるの?
公務災害については、公務災害補償を受ける権利が「2年」の消滅時効(ただし、傷病補償年金・障害補償・遺族補償は「5年」)が適用されます。
公務災害の認定について争う方法は?
公務災害の認定に不服がある場合には、地方公務員のときは、地公災基金支部審査会に対する審査請求、同本部の審査会に対する再審査請求、行政訴訟による争いが考えられます。国家公務員のときは、人事院に対する審査請求、行政訴訟による争いが考えられます。
行政訴訟の種類はいくつかありますが、地方公務員の場合には、例えば災害補償請求を認めない処分に対する取消訴訟という方法が考えられます。一方、国家公務員の場合には、取消訴訟という方法ではなく公務災害認定を求める訴訟(公務上の災害の国家公務員災害補償法が定める災害補償の要件を満たしていることを同法に基づく災害補償請求を行う)または地位確認訴訟を行うことが考えられます。
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