
うつ病の労災認定について

①認定準対象となる精神障害を発病していること
まず大事なのは、「特定の精神疾患」を発病したことが必要です。厚労省が公表している認定基準は以下の通りです。 認定基準の対象となる精神障害は、国際疾病分類第10回修正版(ICD-10)第5章「精神および行動の障害」に分類される精神障害であって、認知症や頭部外傷などによる障害(F0)およびアルコールや薬物による障害(F1)は除きます。 業務に関連して発病する可能性のある精神障害の代表的なものは、うつ病(F3)や急性ストレス反応です。 そのため、まずは医師に、症状にあった診断書を作成してもらう必要があります。そこに記載された病名に基づいて、労災認定の対象疾病が発病したことが証明されます。 ただし、医師が病名を記載しただけで必ずしも認定されるわけではありません。 うつ病等は、少なからず、本人の申述だけで診断書が作成されることもあるので、カルテや関連資料を通じて事実確認が行われますし、申請者本人や関係者からの意見聴取も行われます。 その結果、総合的に審査をして、発病の有無・発症時期が認定されるのです。②業務による強い心理的負荷が認められるかどうか
次に、精神障害で労災認定を受けるためには、発病前(約6ヶ月間)に「業務による強い心理的負荷」が存在したことが必要です。なお、厚生労働省は「業務による心理的負荷評価表」を公表しており、その表から、「心理的負担強」と判断される場合は、この要件②を満たすことになります。 例えば、「特別な出来事」に該当する出来事が認められた場合には、心理的負荷の総合評価を「強」とします。 ・生死にかかわる、極度の苦痛を伴う、又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした (業務上の傷病により6か月を超えて療養中に症状が急変し極度の苦痛を伴った場合を含む) ・業務に関連し、他人を死亡させ、又は生死にかかわる重大なケガを負わせた(故意によるものを除く) ・強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメントを受けた ・その他、上記に準ずる程度の心理的負荷が極度と認められるもの ・発病直前の1か月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の(例えば3週間におおむね120時間以上の)時間外労働を行った(休憩時間は少ないが手待時間が多い場合等、労働密度が特に低い場合を除く) ※長時間労働 他方で、上に書いたような出来事に準ずるとは言えない出来事、では、以下のような評価をします。 まず、以下の手順により心理的負荷の強度を「強」「中」「弱」と評価します。 (1)「具体的出来事」への当てはめ 業務による出来事が、厚労省が定めた「具体的出来事」のどれに当てはまるか、あるいは近いかを判断します。 (2)出来事ごとの心理的負荷の総合評価 当てはめた「具体的出来事」の欄に示されている具体例の内容に、事実関係が合致する場合にはその強度で評価します。 (3)出来事が複数ある場合の全体評価 ①複数の出来事が関連して生じた場合には、その全体を一つの出来事として評価します原則として最初の出来事を具体的出来事として別表1に当てはめ関連して生じたそれぞれの出来事は出来事後の状況とみなし、全体の評価をします。 ②関連しない出来事が複数生じた場合には、出来事の数、それぞれの出来事の内容、時間的な近接の程度を考慮して全体の評価をします。 ※長時間労働の場合長時間労働に従事することも精神障害発病の原因となり得ることから、長時間労働を次の3通りの視点から評価します。
①長時間労働がある場合の評価方法発病直前の極めて長い労働時間を評価します。
②発病前の1か月から3か月間の長時間労働を出来事として評価します。
③他の出来事と関連した長時間労働出来事が発生した前や後に恒常的な長時間労働(月100時間程度の時間外労働)があった場合、心理的負荷の強度を修正する要素として評価します。
③業務以外の心理的負荷や個体側要因により精神障害を発病したものではないこと
「業務以外の心理的負荷評価表」というものを用いて、心理的負荷の強度を評価します。それの「Ⅲ」に該当する出来事が複数ある場合などは、それが発病の原因であるといえるか、慎重に判断します。 例えば、離婚又は夫婦が別居した、自分が重い病気やケガをした又は流産した、自分が病気やケガをした、夫婦のトラブル不和があった、自分が妊娠した、定年退職した等が表に載っています。 また、家族が死亡した、多額の財産を損失した、天災や火災があった等です。 「個別要因」としては、精神障害の既往歴やアルコール依存状況などの有無とその内容について確認し、個体側要因がある場合には、それが発病の原因であるといえるか、慎重に判断します。 ■厚生労働省 精神障害の労災認定 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/120427.html労災の認定事例

労働災害が発生したときの申請方法

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