労災の被害にあって、治療をしてもそれ以上改善せず、後遺障害として症状が残ってしまう時期がくることがあります。そうした場合、労働基準監督署へ障害(補償)給付の申請を行い、後遺障害等級が認定されると、労災保険から等級に応じた給付金を受け取ることができます。
ここでは、後遺障害で6級に認定された場合の具体的な症状や請求できる費目などについて詳しく解説します。
労災における後遺障害とは?
労災においては、後遺障害が問題となることが少なくありません。
後遺障害とは、治療による改善が見込めず将来的に一定の症状が残存する状態をいいます。
通常、これ以上治療しても症状が改善しないと判断されることを、「症状固定」と言います。医師が診断書にそれを書いて決めます。
後遺障害には重い方から順に、1級~14級の等級があります。
これらが認定されると、それぞれに応じた給付がなされることになります。
労災保険の種類
そもそも労災保険では、どういった給付を受けることができるのでしょうか。
- ①療養(補償)等給付→労災による傷病治癒されるまで無料で療養を受けられる制度
- 療養(補償)等給付→労災による傷病治癒されるまで無料で療養を受けられる制度
- 休業(補償)等給付→労災の傷病の療養のために休業し、賃金を受けられないことを理由に支給されるもの
- 傷病(補償)等年金→療養開始後1年6か月を経過しても治癒せず、一定の傷病等級(第1級から第3級)に該当するときに支給されるもの
- 障害(補償)等給付→傷病が治癒したときに身体に一定の障害が残った場合に支給されるもの
- 遺族(補償)等給付→労災により死亡した場合に支給されるもので、遺族等年金と遺族(補償)等一時金の2種類が存在する
- 葬祭料等(葬祭給付)→労災により死亡した場合で、かつ葬祭を行った者に対して支給されるもの
- 介護(補償)等給付→傷病(補償)等年金または障害(補償)等年金を受給し、かつ現に介護を受けている場合に、支給されるもの
- 二次健康診断等給付→労働安全衛生法に基づく定期健康診断等の結果、身体に一定の異常がみられた場合に、受けることができるもの
その種類は、
8つとなっており、このうち、後遺障害が残ってしまった場合に関連する給付は④の障害(補償)等給付となります。
障害(補償)等給付の種類
・障害等級第1級から第7級に該当:障害(補償)年金、障害特別支給金、障害特別年金・障害等第8級から第14級に該当:障害(補償)一時金、障害特別支給金、障害特別一時金 |
障害(補償)等給付としての支給は、傷害の程度により大きく2つにわけることができます。
後遺障害の等級は、大きな後遺障害ほど小さい数字の等級が認定されるので、第1級から第7級という後遺障害のなかでも特に深刻なものについては、年金として、等級に応じた金額が毎年(6期に分けて支給)支払われます。
6級が認められるための要件は、以下の通りです。
6級が認められるための要件
障害等級6級 | 給付内容 | 身体障害 |
1 | 同156日分 ※毎年支給される | 両眼の視力が〇・一以下になったもの |
2 | そしやく又は言語の機能に著しい障害を残すもの | |
3 | 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの | |
3の2 | 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | |
5 | せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの | |
6 | 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの | |
7 | 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの | |
8 | 一手の五の手指又は母指を含み四の手指を失ったもの |
特に争いが生まれる要件の解説
1.せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
「脊柱に著しい変形を残すもの」とは、エックス線写真(レントゲン写真)、CT画像またはMRI画像により、脊椎圧迫骨折や脱臼などを確認することができる場合であって、次のいずれかに該当するものをいいます。
・せき椎圧迫骨折等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じているもの
・せき椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じるとともに、コブ法による側彎度が50度以上となっているもの
正直、素人がみてわかるものではないので、医師によく確認をしてもらう必要があります。労災をよくわかっていない医師は、これを見逃す危険性もあります。
2.一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
「関節の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
関節が強直したもの
関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの
人工関節・人口骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの
なお、「関節の強直」とは、関節の完全強直またはこれに近い状態にあるものをいいます。「これに近い状態」とは、関節可動域が、健側の関節可動域角度の10%程度以下に制限されているものを言います。
後遺障害第6級でもらえる給付の種類
労災事故で後遺傷害6級となってしまった場合に受けられる給付は、
・障害(補償)年金
・障害特別支給金
・障害特別年金
・その他(介護(補償)等給付など)
※後遺障害2級の事故となると随時介護が必要となることが多いため、その他介護(補償)等給付なども受けられることが多いです。
となっています。
まずは、障害補償年金として、給付基礎日額の156日分が、障害が残る限り毎年継続して支払われます。
給付基礎日額の計算方法は別途ありますが、日給の156日分というイメージをもっていただくと良いでしょう。
その他、特別支給金として、192万円が、労基署から払われます。これは、1回のみです。
慰謝料は?弁護士に依頼する必要があります
実は、労災からもらえるもの以外で、会社に請求できるものがあります。
まずは、
後遺障害が認定されれば、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益という2つの損害を請求できることになります。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、後遺障害による精神的な損害に対する補償です。
後遺障害の等級により金額が異なり、6級の場合、弁護士基準(いわゆる「赤本基準」)では、1180万円を請求することができます。
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺障害により将来的な稼働能力が低下することに対する補償です。
後遺障害逸失利益は、基礎収入に各等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間(症状固定時から67歳までの期間)に応じたライプニッツ係数を掛けて計算します。
ライプニッツ係数とは、将来にわたって発生する賠償金を先に受け取る場合に控除する指数をいいます。
11級の労働能力喪失率は、67%です。
例えば、年収400万円の正社員で症状固定時に40歳であれば、単純計算、400万円×67%×14.6430=3924万円になります。
それぞれの請求先
これらについては、労災からは支給されないので、自分の所属する会社や、労災に相手方(第三者)がいれば相手方に請求する必要があります。
会社に請求できることを知らない方は結構多いです。
弁護士に相談・依頼するメリット
後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益は、労災からは支給されません。
これらを請求するには、自分が所属する会社などを相手に損害賠償請求を行う必要があります。
ただ、この損害賠償請求は、会社に過失(安全配慮義務違反)がなければ認められません。
会社に過失が認められるかどうかは、労災発生時の状況や会社の指導体制などの多くの要素を考慮して判断する必要がありますので、一般の方にとっては難しいことが現実です。
弁護士にご相談いただければ、過失の見込みについてもある程度の判断はできますし、ご依頼いただければそれなりの金額の支払いを受けることもできます。
また、一般的に、後遺障害は認定されにくいものですが、弁護士にご依頼いただければ、後遺障害認定に向けたアドバイス(通院の仕方や後遺障害診断書の作り方など)を差し上げることもできます。
そのため、労災でお悩みの方は、お気軽に弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。
まとめ
ここまで、後遺障害の等級が第6級であった場合に受け取ることのできるお金の種類、その計算方法、金額について解説いたしました。
労働災害については、そもそも労災の申請を漏れなく行うことや、場合によっては会社に対する請求も問題となります。
労災にあってしまった場合、きちんともれなく対応を行うことで初めて適切な補償を受けることができますので、ぜひ一度弁護士にご相談いただけますと幸いです。
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