労災が発生した場合、労働者が労災申請をしようとしても会社が協力をしてくれないことがあります。
これは、いわゆる労災隠しですが、残念ながらそのような会社は存在します。
このコラムでは、会社が労災申請に協力してくれない場合の対処法などについて詳しく解説します。
労災隠しのパターン
労災が発生したケースで、会社が以下のような対応をすることがあります。
これらの対応は、労災が発生したのにもかかわらず全く報告しないまたは正確に報告しないものであり、いわゆる「労災隠し」にあたります。
業務中に事故に遭ってケガをしたのに、会社が労災申請に協力してくれない。
業務中の事故でケガをした場合、会社には、基本的に、労災として対応する義務があります。
それにもかかわらず、会社が労災に協力してくれないというのは意図的にこの義務を果たさないものであり、問題があります。
「君は正社員じゃないので、労災は適用されない」と言われた。
事業主と雇用契約を結んで労働している人であれば、雇用契約の形態(正社員、契約社員、派遣社員など)を問わずに、労災の適用を受けます。
「アルバイトだから労災は適用されない」と言う会社がありますが、これは間違いです。
労災でケガをし、会社が労災申請には応じるものの、軽傷扱いにすると言われた。
業務中にケガをした場合、基本的には労災として対応をするべきです。
たとえ、打撲などの軽いケガだったとしても、労災にあたり得ることに変わりはありません。
また、軽傷であるかどうか判断するのは医師や労基署であり、会社がケガの程度を判断するものではありません。
労災報告は事業者の義務です
業務中や通退勤中、業務に起因して労働者が怪我、病気、障害、死亡した場合には「労働災害」となります。
労働災害が起こったら、雇用者は必ず労基署に対して労災が発生した事実を報告しなければなりません。
このことを「死傷病報告」と言います。
死傷病報告は、労働安全衛生法という法律によって定められた会社の義務ですので、報告をせずに労働者に「労災申請をするな」と言うことは違法行為なのです。
労災報告しなかった場合のペナルティ
もしも労災が発生しても企業が死傷病報告をしなかった場合、刑事罰が適用されます。
罰則の内容は50万円以下の罰金刑です。
これ以外にも、労災隠しをした企業ということが外部にも知られる可能性があり、その場合、会社のイメージ低下にもつながります。
このように、労災隠しをした場合、会社にはいくつものデメリットがあるのです。
なぜ会社は労災隠しをするのか?
違法であるにもかかわらず、会社が労災隠しをするのには、以下のような理由が考えられます。
労災保険料が上がる可能性がある
労災保険を利用すると、企業が負担する労災保険料が上がる可能性があります。
会社のイメージが低下する
労災事故が起こったり従業員が病気になったりしたことで、企業に対する社会のイメージが低下する可能性があります。
しかし、「3」でも説明したとおり、むしろ労災隠しをする方が企業としてクリーンでないという強い印象を世間には与えますので、企業のイメージを考えるなら、企業としては、労災には誠実に対応する方が良いといえます。
手続が面倒だと思っている
労災申請に協力してくれない会社の中には、労災申請の手続が面倒だから協力しないという会社もあります。
これはあってはならない理由ですので、労働者としては、毅然と対応することが大切です。
会社が労災申請に協力してくれない時の対処法
すぐに労災申請する
勤務先から「労災申請しないように」とか「労災が適用されない」などと言われても、従ってはいけません。
労災に遭った労働者には労災保険を利用する権利があるので、速やかに労災申請をしましょう。
労災の申請書には、会社に押印してもらう欄がありますが、そちらについては会社の協力をもらえない場合は、「会社が協力してくれない」という旨を書き、労基署にもその旨を説明して労災申請をしましょう。
弁護士に相談の上、労災保険を適用して治療を受ける
ケガや病気の治療は、労災保険を適用して労災保険認定病院で受けましょう。
労災保険が適用される場合、労災保険認定病院であれば、窓口での負担なしに治療を受けられるからです。
それ以外の病院ではいったん費用を立て替える必要があります。
なお労災が適用される場合、健康保険は使わないようにしましょう。
弁護士や労基署に相談する
労災隠しは違法行為ですので、会社から労災を使わないように言われたら労基署に相談しましょう。労基署から指導勧告が行われ、状況が変わる可能性もあります。
それでも、会社の対応が変わらない場合、弁護士に相談することをおすすめします。
また、ケガの治療が終了し、後遺障害の話が落ち着きましたら、会社に対する損害賠償の話になりますので、お早めに弁護士に相談することをおすすめします。
ひとつでも当てはまったらすぐに弁護士へ相談を! チェックリストをご活用ください!
労災に遭ったとしても、それが初めての場合などは、どのように進めればよいのかなかなかわからない方が多いと思います。
下記のチェックリストにひとつでも当てはまる方は、お早めに弁護士にご相談ください。
①会社が労災申請に協力してくれない。→すぐに弁護士へご相談ください
②労災の手続中である(病院で治療などを受けている)。→お早めに弁護士にご相談ください
※会社への損害賠償請求には時効がありますので、労災の手続中の方もお早めに弁護士にご相談ください。
③後遺障害が認定された。→お早めに弁護士へご相談ください
※会社への損害賠償請求には時効がありますので、お早めに弁護士にご相談ください。
④後遺障害が認定されなかった。→すぐに弁護士へご相談ください
※後遺障害の認定結果については、不服申し立てをすることができますが、不服申立てには期間制限がありますので、すぐにご相談ください。
⑤治療がすべて終了した。→お早めに弁護士へご相談ください
※会社への損害賠償請求には時効がありますので、お早めに弁護士にご相談ください。
※治療がすべて終了した場合、後遺障害申請をするかどうかも問題になります。この判断には専門的な知識が必要ですので、お早めに弁護士にご相談ください。
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