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Q.労災事故で怪我をした場合の逸失利益(損害賠償)とは?
A.後遺障害(後遺症)の逸失利益とは、後遺障害を受けたことによって、将来の収入が喪失・減少してしまうという損害のことです。逸失利益の金額は計算方法があります。
後遺障害とは
労災事故によって、重大な怪我を負い、治療しても残ってしまった症状を後遺障害(後遺症)といいます。
労災事故の場合、第1級から第14級までの障害等級というものが定められており、被災労働者からの障害補償給付申請を受けて労働基準監督署が障害等級を認定します。
1級が一番重く、14級が一番軽い等級です。14級より下はないので、14級に当てはまらないと、「非該当」つまり、後遺障害は無いということになります。
身体のどこの部位のどのような症状がどういう障害等級になるかは詳細に定められています。
詳しくは、労災事故と後遺障害・等級認定をご参照ください。
後遺障害による逸失利益
後遺障害を負った場合、労災事故の前に比べて、稼働(労働)能力が失われるのが普通です。それなので、以前と同じように働いても同じ(またはそれ以上の)収入を得られなくなる可能性が高くなります。
※職種によっては、収入が変らない方もいるかと思います(わかりやすいのは公務員)。その場合でも、本人の「特別な努力」でその収入を維持していると認められる場合は、逸失利益を認めても良いという考え方があります。また、そもそも逸失利益の計算は、本当は将来のことは誰にもわからないので、一種の「フィクション」が混じっているものと言えます。
後遺障害を負うと、将来にわたっての稼働収入を喪失・減少してしまうのです。
この失った利益(収入)を逸失利益といいます。
どういう障害がどの程度、収入の減少をもたらすかについては、障害等級ごとに「労働能力喪失率」というものが定められており、それにしたがって、逸失利益を算出することになります。
例えば、脊髄損傷により下半身不随になってしまったという場合、おそらく障害等級は第1級から第3級のいずれかと認定されることが多いと思われます。
これら(1〜3級)の場合、労働能力喪失率は「100%」とされています。労働能力を完全に喪失したとみなすということです。
また、例えば、機械に巻き込まれるなどの労災事故に遭い、骨折して治った後も右手関節(手首のこと)の可動域が、健常な左手関節の2分の1以下になってしまったという場合、おそらく障害等級は第10級と認定されます。
10級の場合、労働能力喪失率は「27%」とされています。
事故前の年収の27%程度が、今後稼げなくなるという考え方です。
逸失利益は、(労災事故前の年収)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対応する係数)で算出されます。
例として、年収400万円だった方が労災事故に遭い、障害等級10級の認定を受け、この当時40歳だった場合、
(労災事故前の年収)400万円
(労働能力喪失率)27%
(労働能力喪失期間(※1)に対応する係数(※2))18.3270
400万円×27%×18.3270=1979万3160円
逸失利益は「1979万3160円」となります。
※1 原則として、67歳までの年数です。
※2「ライプニッツ係数」といいます。将来の1年ごとに発生する損害を、現在の一時に受け取る(前受け)ために、いわゆる受取利息の反対にディスカウントされる、という理解です。令和4年現在の法定利率3%を前提として、27年に対応するライプニッツ係数は18.3270です。
損害賠償請求ができる場合
労災事故の発生について、会社(事業主)にも責任があれば、労働者は労災保険では完全な補償給付を受けられない損害項目である、
①慰謝料(入・通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)
→労災からは一切支給されません
②後遺障害や死亡によって喪失した将来の完全な稼働利益(逸失利益)
→労災からは、相場の一部しか支給されません
③100%分の休業損害の各賠償請求
→労災からは、80%分しか支給されません。
を事業主に対して行うことができます。
逸失利益を相場通りに得るためには、通常、事業主への損害賠償請求をしなければなりません。
お早めのご相談・ご依頼で安心を
労働災害に遭われた労働者の方が、個人で会社と損害賠償請求のやりとりをするのは、一般的には難しいかと思います。
また、労災事故態様に関する証拠や資料の収集も容易ではありません。
ほとんどの方が労働災害に遭うこと自体初めての経験ですから、ご自身ではよく分からないことが多く、どのように交渉を進めればよいか悩ましく、非常にストレスを感じることと思います。
また、会社側も「そもそも労働者(=あなた)」の過失事故であり、会社に責任はない」、「労働者に大きな過失があった」というように、「安全配慮義務違反がない」と主張したり、仮に会社の責任を認めても「過失相殺(割合)」で大幅減額を主張してくる場合が少なくありません。
そのような時に、弁護士は、法的な分析と主張を適切に行います。
弁護士にご依頼いただくことで、会社側にどの程度の責任があるのかどうかをより正確に判断し、会社側と対等に交渉することが可能です。
また、「弁護士に依頼するかについては未定」という方も、お早めにご相談いただくことで、弁護士はその方の具体的な事情を踏まえたアドバイスができますので、ご不安の解消や、今後の方針を立てるお役に立つことでしょう。
労災事故に遭われて、お悩みの方はぜひ一度、ご相談なさってみてください。
ご相談は、電話でもメールでもLINEでも可能で、いずれも無料です。ご相談はこちらです。
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