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工場に勤め、ベルトコンベアを掃除していた浜田さん。
浜田さんは一人、ベルトコンベアのリターンローラー部(ベルトコンベアを折り返す端の部分)に付着した汚れを、ブラシを用いて落としている際、ベルトコンベアを停止させずに作業したため、リターンローラー部とコンベアベルトの間にワイヤブラシごと挟まれ、左腕を巻き込まれました。
その結果、左手を切断するけがを負いました。
なお、職場では、清掃時は3人以上で行うとされていましたが、誰がどのように作業に加わるのか等、明確になっていませんでした。
※労災を説明するための架空事例です。会社名や名前は仮名となります。
1 労災の流れ
手の切断ということで、ご本人はもちろん、ご家族の方もご心配、ご不安な思いをされたと思います。
今回の事例では、浜田さんは、仕事中にベルトコンベアに巻き込まれて手を切断してしまったので、労働災害の申請をすれば、様々な給付を受けることが出来ます。
では、どのような労災保険給付が受給できるのかというと、おおむね次の図のようになります。
大別して、①治療を進める段階と、②症状固定後に後遺障害が残ってしまった段階とに分かれます。
①治療を進める段階
治療を進める段階では、治療費が発生しますので、療養給付を受けることにより、その全額を給付してもらえます。また、お仕事をすることもできない場合には、休業給付を受けることにより、所定の金額(※)を給付してもらえます。
(※)所定の金額とは、原則として、「給付基礎日額」(=災害が発生した日以前3ヵ月間に被災した労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った額)が、休業1日につき、給付基礎日額の60%、加えて、給付基礎日額の20%が特別支給金として支給されます。
②症状固定後に後遺障害が残ってしまった段階
症状固定後に後遺障害が残ってしまった段階では、障害給付の対象となります。
後遺障害等級が第4級~第5級と認定された場合には、給付基礎日額の213日~184日分の障害年金を給付してもらえます。
そして、浜田さんのように、左手を切断してしまった場合は、以下の通りの認定がされます。
2 片手を切断してしまった場合の後遺障害等級
後遺障害等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
4級4号 | 一上肢をひじ関節以上で失ったもの |
5級2号 | 一上肢を手関節以上で失ったもの |
「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは?
次のいずれかに該当する状態です。
A 肩関節において、肩甲骨と上腕骨を離断した
B 肩関節とひじ関節との間において上肢を切断した
C ひじ関節において、上腕骨と橈骨および尺骨とを離断した
「上肢を手関節以上で失ったもの」とは?
次のいずれかに該当する状態です。
A ひじ関節と手関節の間において上肢を切断した
B 手関節において、橈骨および尺骨と手根骨とを離断した
3 会社に対する損害賠償請求等の流れ
労災給付を受け取ったとして、それ以外の金銭は受け取れないのでしょうか。
実は、会社に対して、損害賠償請求を行使できる可能性があります。賠償請求のタイミングは、多くの場合、症状固定後になります。
労働災害は、労働者が会社のために労力を提供している中で起きることが大半です。使用者である会社としては、労働者が安全に業務を遂行するよう様々な配慮をし、安全策を講じなければなりません。
そのような策を講じず、あるいは不十分であったために生じた労災については、会社も賠償責任を問われることになります。
浜田さんの事例においては、会社が清掃作業に係る職員の役割分担を指示していなかったために、会社が安全に配慮する義務を怠っていたと認定され、会社が賠償責任を問われる可能性があります。
そして、労災により給付される金額は、会社の損害賠償請求できる金額の一部に過ぎないことが大半ですので、労災給付とは別に、損害賠償を請求することが可能です。
例えば、浜田さんのような事例で左手を切断された結果、後遺障害等級が上記表の【4級4号】に該当したとします。
その場合、浜田さんは、このような後遺障害が残ってしまったことの慰謝料を、会社に請求することができます。
そして、4級4号の場合の基準慰謝料は、1670万円です。
4 過失相殺
ところで、損害賠償請求では、過失相殺といって、労働者の落ち度を指摘されることもあります。
過失が認められれば、損害額から過失割合分を減額(民法722条2項の類推適用)される可能性もあります。
今回の事例でも、浜田さんの左手がベルトコンベアに巻き込まれた原因は、ベルトコンベアを停止せずに、浜田さんがブラシで汚れを取ったことにあり、仮に、浜田さんに過失が認められてしまったという場合、その原因の程度に応じて、浜田さんの過失割合が決められ、その分が損害から引かれる可能性があり得ます。
しかし、ベルトコンベアを停止せずにブラシで汚れを取ろうとする行為に過失があったと言えるか否かは、具体的な事情によって判断が分かれますので、詳しく事情を検討する必要があります。例えば、もともとベルトコンベアを停止させて浜田さんがブラシで汚れを取っていたところ、他の職員が誤ってベルトコンベアを動かしてしまい、そのためにブラシが巻き込まれて浜田さんが左手を巻き込まれたのであったのだとすれば、浜田さんに過失があったと認めることは出来ないでしょう。
5 おわりに
労災に遭われた方及びそのご家族の方は、治療等の労力にとどまらず、労災手続のこと、将来の仕事、経済面での不安、会社との交渉をどのように進めるべきか、どのような証拠をどうやって集めたらいいのかなど、心配事が尽きないのが通常です。
労災の事件処理は複雑な面がありますので、労災に関する手続や経済面での不安については、弁護士にご依頼いただくことも選択肢の一つです。
私たちグリーンリーフ法律事務所の弁護士は、少しでもご負担を軽減することや妥当な賠償を受けることに繋がるよう尽力いたします。
お悩みの方は、まずは弊所までお気軽にお問合せください。
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